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手のひらサイズで撮影はお任せ。キヤノン自動撮影カメラ PowerShot PICK ハンズオン

沿って mobilephones 09/05/2022 947 ビュー

電源を入れるだけで勝手に撮影が始まる──。そんなことが可能なキヤノンの自動撮影カメラ PowerShot PICK がいよいよ一般向けにも販売されます。もともとはクラウドファンディングMakuakeにて支援を募り、開始10分で1000万円に達し、総額1億6785万円を集めたことからも注目度の高さがうかがえます。

多くの人が関心を持つであろう PowerShot PICK のコンセプトは、静止画も動画もカメラ任せにしてしまう──というもの。具体的には、周囲の人物の顔を自動で認識し、レンズを上下/左右に動かしながら、被写体の顔の位置・ 大きさなどに基づいた構図の自動調整や、被写体の表情などを考慮した自動撮影が可能です。

犬や猫などのペットは認識できませんが、家族だんらんのひと時を自動で画像・動画として記録してくれる、というのが最大の魅力です。

自動撮影機能の設計で最も苦労したことをキヤノンの開発担当者に聞いたところ「自由に動き回る人を一般的なカメラ以上に追いかけなければならない。左右にパンを振るときの映像のブレを抑えるだけでなく、パンを振るときの速さも工夫が必要だった」と話していました。

「カメラレンズを通して捉えた映像に変化があると、シャッターチャンスを逃すことのないように自動でシャッターを切れるようにした」ともいい、カメラ任せという点を重視して、設計されたことがうかがえます。

ちなみに、ハードウェアに関してはクラウドファンディングで先行販売した製品と同じですが、11月末に発売予定の製品はファームウェアアップデートにより、自動撮影や被写体認識の精度が高まっているとのことです。

大事な一瞬とかシャッターチャンスとかを逃さない(素早くカメラが被写体のピントを合わせるなどの技術で、カメラマンの判断を遅らせない)という文言はこれまでにも多くのカメラメーカーが商品宣伝に用いていましたが、カメラマンは果たしてカメラ任せで大事な一瞬を捕らえたがるか?という疑問が頭をよぎりました。要は、腕に自信があるカメラマンほどカメラの自動撮影に頼りたくないのではないか、ということです。

この点についてキヤノンは「プロのカメラマンよりもとにかくカメラ初心者でも扱えるようなカメラをラインナップに加えたかった」と胸を張ります。PowerShot PICK は単にカメラ任せというよりも、被写体自体がカメラを意識せず自然体で動画・静止画を残せる(記録できる)、という点も謳い文句の裏に隠れた大事な要素だと思います。

話を聞いているうちに課題もわかってきました。一つは、プレスリリースの注釈にもあるように、口、鼻、目、輪郭のいずれかが覆われていると、認識しない場合があること。

例えば、コロナ禍でマスクを着用したまま、PowerShot PICK を使ってパーティーをした場合、認識どころか自動撮影ですらうまく動作しない、ということになります。とはいえ、このご時世にマスクを着用せず、家族や知人と密集して、一緒に映るというシーンは少ないはずなので、この点は許容範囲内といえるでしょう。

それよりもペットの認識ができないことの方が、改善希望点であると思いました。特に筆者の場合は犬を飼っているため、せっかくの思い出画像/動画は一緒に写りたいと思った次第です。なお、2021年11月9日時点では次世代機の登場有無は回答できないとのことでした。

もう一つ、改善要望として上がっているのが、撮影後のデータ転送方法についてです。PowerShot PICK はディスプレイを備えないため、撮影した画像/動画は全てアプリで確認する仕様となっています。

初期設定の際には PowerShot PICK とスマートフォンをBluetoothで接続しますが、リモート操作や画像/動画の転送にはWi-Fiを使います。キヤノンによれば、一部には有線で双方を繋いで、画像/動画を転送したい、というユーザーもいるようですが、現状だとそれができません(ソフトウェアアップデートでも解決できないとのこと)。


 手のひらサイズで撮影はお任せ。キヤノン自動撮影カメラ PowerShot PICK ハンズオン

また、PowerShot PICK は家庭内だけでなく、外に持ち出して使うこともできますが、防水・防塵性能は有していないため、過酷な環境下での使用は避けた方が良さそうです。

静止画撮影と動画撮影に関しても留意点があります。

静止画撮影については、暗所の場合が画像が悪化する可能性がある、という点。シャッタースピードを優先しているため、ISO感度が上がりやすいとしています。また、カメラ任せで使う製品なので、当然ながらユーザー側でシャッタースピードやISO感度を変更することはできません。

動画撮影に関しては、1回に撮影できる時間が限られています。公式情報では、

となっています。自動と手動の切り替えは、PowerShot PICK ではなくアプリで行います。

また、定点撮影にも使えそうな 60(幅)×90(高さ)×60(奥行き)mmという手のひらサイズと、重さ約170gを実現した PowerShot PICK に、撮りっぱなしを求めるユーザーも存在しそうですが、キヤノンいわく長時間撮りを想定した製品ではないとのこと。規定の連続撮影可能時間を超えると、自動的に撮影が止まります。

撮影データはSDカードに記録され、写真や動画の構図などに点数をつけ、低い評価をしたものが自動的に削除されますが、ユーザーが気に入ったもののみを残しておくことも可能です。

写真や動画は、スマートフォン(Android/iOS)アプリ「Connect app for Mini PTZ Cam」(以下、同アプリ)で閲覧できます。同アプリでは、ユーザーの好みに応じて撮影条件を変えたり、スマートフォンの画面を見ながら操作したり、といったことも行えます。

また、三脚のネジ穴が底面に配置されているため、PowerShot PICK に三脚を装着して外ロケにも使えそうです。そこで役立つのがトラベルログ撮影機能。これは、撮影画像に位置情報を付帯させるというもので、後からどこで撮影した写真/動画なのかを確認できます。

ただし、このトラベルログは同アプリで確認することができず、 PowerShot PICK のSDカードを抜き出して、スマートフォンに挿すことで確認できるそうです。裏技のような方法ですが、現状はiPhoneのギャラリーやGoogleフォトアプリであれば、撮影地を確認できるとのことです。

同アプリに搭載されている機能の中で好感を持てたのが、アドバイスをしてくれるような機能です。例えば、撮影場所を変えたいときは「そろそろカメラの設置場所を変えてみませんか?」とメッセージをくれます。また、電池切れのアラートや、アクシデントで倒れたりしても、自ら「カメラが倒れていないか確認してください」などとスマートフォンへの通知で教えてくれます。初心者に優しい機能ですね。

音声によるハンズフリー操作が行えるのも PowerShot PICK の売りの一つとなっています。

というように呼びかけると、上記4種類の動作を音声だけで操作できます。ただ、クラウドファンディングを通じて購入した一部のユーザーからは、「こっちを向いてほしい」という呼びかけにも反応してほしい……といった要望が上がっているのだとか。こちらについては、アップデートを期待したいところです。

ほかにも、PowerShot PICK と PC をWi-Fi接続することで、ウェブカメラとしても使用可能。コロナ禍でテレワークが当たり前となりつつあるイマドキの仕様です。条件はPC専用アプリケーション「Wireless Webcam Utility for Mini PTZ cam」(2021年10月公開)のインストール。対応OSはWindows。音声は送信できないため別途マイクが必要です。

ここまでお伝えしたように、PowerShot PICK の各機能をチェックしてみると、カメラを構えて対象物にフォーカスしてシャッターを切る、という従来のカメラの概念を覆し、すべてカメラ任せにしてしまおう、というキヤノンの思想が具体化されています。かんたんに撮って、思い出を残しておく、程度の用途に最も向くカメラが PowerShot PICK だと感じました。

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