◆対露非難決議を棄権したインドと上海協力機構
<2月26日(アメリカ時間25日)、国連安全保障理事会(国連安保理)(15ヵ国)は「ウクライナに侵攻したロシアを非難し即時撤退を求める決議案」を否決した。ロシアが拒否権を行使したからだが、注目すべきは「中国、インド、アラブ首長国連邦(UAE)」の3ヵ国が棄権したことだ。
<3月2日になると、国連総会は緊急特別会合を開き、「ロシアによるウクライナ侵攻に最も強い言葉で遺憾の意を表し、ロシア軍の即時かつ無条件の撤退とウクライナ東部の親ロシア派支配地域の独立承認の撤回も要請する決議」を141ヵ国の賛成多数で採択した。ロシアをはじめベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリアの5ヵ国が反対し、中国やインドあるいはパキスタンなど35ヵ国が棄権した。
<2月26日の棄権国の中にUAEが入っている理由に関しては、3月3日の論考<習近平が描く対露【軍冷経熱】の恐るべきシナリオ>や2021年3月31日のコラム<王毅中東歴訪の狙いは「エネルギー安全保障」と「ドル基軸崩し」>で述べたように、イラクをはじめサウジアラビアやアラブ首長国聯盟など中東諸国は、アメリカと石油の供給などを巡って争っており、特にトランプが約束したサウジアラビアやアラブ首長国連邦への武器輸出を、バイデンは一時凍結すると宣言したので、反バイデンの傾向が強くなっているからだ。
<3月2日の国連非難決議ではアラブ首長国連邦は棄権しなかったが、インドは棄権した。
「上海協力機構」のメンバーだ。上海協力機構は、ソ連崩壊後の1996年に中国が、ロシアや中央アジア諸国に呼び掛けて設立させたもので、基本的に「反NATO」という色彩を帯びている。2000年に、アメリカの一極支配やNATOの東方拡大への抵抗を前面に打ち出している。インドやパキスタンは2017年に同時加盟した。
<3月3日夜も、日米豪印クワッドの首脳がオンライン会談をしたが、テーマは「ロシアが軍事侵攻したウクライナ情勢について」だったというのに、会談後の共同発表では「ロシアに対する直接の言及はなかった」とのこと。クワッドの危うさを浮き彫りにしただけだ。
図表1:ウクライナを巡る「中露米印パ」相関図
◆【露印】は軍事的緊密国――インドは1960年代から旧ソ連&ロシアから武器を購入
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<1960年代に入ると突然増えているのは、1962年10月20日から11月21日にかけて、中国とインドの間で「中印戦争」があったからで、このころ中国と旧ソ連は激しく対立していたので、ソ連はインドを支援して、インドに武器を送り始めた。中ソ紛争中、ソ連としてはインドに武器を売って中国を挟み撃ちにしようという考えもあった。
インドのモディ首相とロシアのプーチン大統領の緊密なむつまじさが影響していると中国メディアは解説している。
<2019年にロシアからの輸入量が突然減っているのは、パキスタンのテロ組織がインドでテロ事件を起こした時に、トランプ政権で国家安全保障問題担当だったボルトン補佐官が、2019年2月に15日にインドのカウンターパートに電話して、「アメリカはインドの集団的自衛権を支持する」と伝えて、インドにアメリカから武器を購入する方向に持っていったからだ。集団的自衛権を認めたということは、国連決議を経なくても、「一方的にパキスタンに侵攻しても国際法違反にならないように国連安保理でしてあげる」ということを意味する。
「ロシアが拒否権を使わなくても、アメリカが拒否権を使ってあげるから、武器はロシアから買わずにアメリカから買おうね」というシグナルをインドに発したのである。
<3月2日、次期駐ロシアのインド大使デニス・アリポフ氏は「インドへのS-400ミサイル部隊(5個連隊)の引き渡しは、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁の影響を受ける可能性は低い」と言っている。
◆【印パ】は互いに宿敵
◆【中露】は【軍冷経熱】
◆【中印】関係は微妙
<2014-07-15/2014-09-18/2015-05-14/2015-07-09/2016-06-24/
<2016-09-04/2016-10-15/2017-06-09/2018-04-27/2018-06-09/
<2018-12-01/2019-06-13/2019-11-14
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◆【中パ】はパキスタン回廊で緊密
<1962年までは、ほぼ100%アメリカから武器を輸入していたパキスタンだったが、1962年から中国に代わり、その後紆余曲折を経て、習近平政権以降は圧倒的多数の武器を中国から輸入するようになった。
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◆【米ウ】関係は蜜月?――ウクライナは古くからのバイデンの地盤
◆【中ウ】関係はソ連崩壊後から蜜月
といったことが言えようか。