バッテリーは高評価、でもそれくらい、と。
今年もまた悩ましい季節がやってきました。iPhoneにProができてからというもの、Proでベスト中のベストを手に入れるか、Proじゃないほうで足るを知るか、っていう迷いポイントが加わりましたよね。でも、今回iPhone 13/13 miniをレビューした米GizmodoのCaitlin McGarry記者は、iPhone 13を買うくらいならiPhone 13 Proに! またはiPhone 14を待って!と言ってます。その理由は以下、レビューでご確認ください。
去年のiPhone 12はiPhone 11からの有意義なアップグレードで、799ドル(日本国内価格8万6800円)〜という価格以上のプレミアム感がありました。iPhone 12 miniに関しては、自分みたいに手の小さい人にはベストなサイズとは思いつつ、(特に5Gを使うと)バッテリーライフが短すぎて、そこまで心が動かなかったんですけどね。
で、今年のiPhone 13のラインナップは、まずiPhone 13 miniのバッテリーライフが大幅増強されたのは良かったんですが、iPhone 13 Proがフラッグシップのハードルを上げちゃって、ProじゃないiPhone 13は大して進化してないように見えます。たしかにバッテリーは、iPhone 11以前はもちろんiPhone 12と比べても増強されたんですが、それがなければ今回はパスしたほうがいいと思います。
ただバッテリーは、これだけでも買い替え理由になるくらい長くなってます。
Apple iPhone 13/13 mini
これは何?:Apple(アップル)のお求めやすいほうのフラッグシップiPhone
価格:iPhone 13が799ドル(9万8800円)〜、iPhone 13 miniが699ドル(8万6800円)〜
好きなところ:増強されたバッテリーライフ、暗い環境での写真がちょっと改善、超高速プロセッサー、2倍になったベースのストレージ
好きじゃないところ:超広角レンズはもういいかなって感じ
バッテリーが本気のアップグレード
なんといってもProじゃないほうのiPhone 13最大のポイントは、みんなにとって不可欠なバッテリーライフの向上です。去年のiPhone 12でも動画再生テストで14時間20分と十分な長さでしたが、iPhone 12 miniは11時間20分しか持たず、実際使っていても夕方充電が必要になることがときどきありました。スマホにとって丸1日持たないのは重罪なので、アップルはかなり悔い改めたんでしょうね。
iPhone 13/13 miniはそれぞれバッテリーが増えて、iPhone 13は17時間近い驚異の長さ、iPhone 13 miniも13時間42分と去年より2時間半近く伸ばしてきました。この2時間半の違いのおかげで、充電ケーブルとか外付けバッテリーを持ち歩くという、小さいスマホ特有の罰ゲーム感がなくなりました。
ちなみにiPhone 13 ProのバッテリーはiPhone 13と同等ですが、iPhone 13 Pro Maxは圧倒的な19時間30分持ち、フル充電1回で2日半持ったという逸話もあります。ただサイズが大きすぎるので、みんなに勧められるってものじゃないですね。
で、やっぱりカメラの話
iPhone 13と13 miniは、iPhone 12と12 miniのように、背面には1,200万画素のデュアルカメラを搭載。一方は「広角」とされる標準レンズ、もう一方は120度の超広角レンズです。iPhone 13 ProとPro Maxにはもうひとつ1,200万画素の望遠レンズがあり、3倍光学ズームが可能です。iPhone 13と13 miniはデジタルズームのみで、静止画が5倍、動画が3倍となってます。
iPhone 13/13 miniのカメラモジュールはiPhone 12/12 miniよりはるかに大きくて、レンズも明らかに大きいです。メインカメラのセンサーはアップルいわく47%多くの光を取り込むことができ、超広角レンズも暗いときのノイズを軽減したとのこと。iPhone 13の全モデルはセンサーシフト手ブレ補正搭載なので、よりクリアに撮れます。この機能は、去年はiPhone 12 Pro Maxでしか使えませんでした。
私は霧の夜にロサンゼルスのダウンタウンを撮るべく、グリフィス天文台に登ってきました。iPhone 13との比較に使ったのは、去年のiPhoneベストカメラであるiPhone 12 Pro Max、3年前のiPhone XS、そしてここ数年でナイトモードの標準を定義してきたGoogle(グーグル)Pixel 5です(サムスンやアップルも去年だいぶ追いついてきましたが)。下の写真は撮り比べたものですが、iPhone 12 Pro Maxが今でもしっかり撮れてる半面、光の量という意味ではiPhone 13のほうが勝ってます。iPhone XSはナイトモードがなくて、それがはっきりわかります。Pixel 5のNight Sightモードは有能さが光ります。
さらにiPhone 13、12、11、XSを、暗い環境で撮り比べてみました。iPhone 12(日本国内価格8万6800円)とiPhone 11(同6万1800円)は今も売っていて、iPhone 12以降にはナイトモードがあります。iPhone 11のメインレンズでもナイトモードがあるんですが、超広角レンズでは使えません。XSには標準と望遠レンズがありますが、どちらもナイトモードはありません。以下、撮り比べ結果をご覧ください。
iPhone 13のカメラは、iPhone 12や11、XSより明らかに良くなっていて、ナイトモードはiPhone 12 Pro Maxをもしのぐ勢いです。ただ、ちょっとスキがあるのが超広角レンズで、iPhone 12よりも自然な色再現には優れているもののベストではないと思います。この点はあとで詳しく触れます。
iPhone 13のメインレンズに関しては、明るい日中の光をうまく処理し、太陽を直接撮ったときでもきれいです。以下のビアガーデンの風景では、光の濃淡を映す地面と、iPhoneのレンズの屈折から来るかすかな緑の光が認められます。一方Galaxy S21 Ultraはシーン最適化がわりと強烈に効きがちなんですが、ここではそれが良い方に働いていて、画像左サイドがiPhoneよりうまく光を捉えています。Pixel 5は逆光で全体が霞んでいますが、そういう写真だと思って見ると、それはそれでクールかも。iPhone XSに関しては、文句なしにiPhone 13の圧勝です。
撮影条件がベストなとき(午後の明るい屋外)も、iPhone 13でうまく撮れてます。下のゴルフ場の写真では、地面の明るい緑と木々の深い緑、赤い旗、そしてかすかな白い雲が、真っ青な空とのコントラストを見せています。それと比べちゃうと、Pixel 5の写真は色からディテールまで全体的にシャープさが落ちてるように見えます。iPhoneはいつもこういう明るい屋外を得意としてきました。逆境でこそ力が出るPixel、恵まれた環境でのびのび使うといい感じのiPhoneっていう、キャラの違いがわかりますね。
iPhone 13は暗い環境での性能改善に加え、iPhone 13 ProとかPro Maxと共通する機能があります。たとえばフォトグラフィックスタイル(よりスマートなフィルター)とか、ポートレートモードの動画版といえるシネマティックモードです。ただ、フォトグラフィックスタイルは良いんですけど別に絶対必要ってものでもなく、シネマティックモードは楽しいけど使いにくいんです。
個人的にはiPhone 13で1週間撮影してみて、正直ちょっとがっかりしました。メインレンズは明るいときも夜も素晴らしいんですが、超広角レンズの方はどうかなーって感じです。たしかに超広角レンズは、ドラマチックな風景写真とかを撮ったり、小柄な人をスーパーモデル並みの長足にしたり(ぜひお試しを)するのに使えるんですが、撮ってるうちにやっぱり望遠レンズが欲しくなります。デジタルズームだけじゃどうも物足りません。iPhone 13がデュアルレンズだとしても、それが望遠と標準の組み合わせで、かつ両方がナイトモード対応だったら、iPhone XSとiPhone 13 Proの間を取ったような感じになって完璧だったんじゃないかと思います。
そんなわけでやっぱり、iPhone 13 Proのほうがカメラとしてはいろんな場面でオールラウンドに使える一方、iPhone 13のアップグレードは普通過ぎる感じです。
デザインはほぼ変化なし
6.1インチのiPhone 13と5.4インチのiPhone 13 miniはそれぞれの先代とほとんど同じに見えますが、2点変わったところがあります。ひとつはノッチがわずかに小さくなった(アップルいわく20%)ことで、横幅がだいぶ小さくなり、縦には若干伸びてます。でも、この変化は無視できる範囲でしかなく、正直何のためにこうしたのかよくわかりません。ノッチにはもう慣れちゃったんで、あとは大きさというより完全になくすかどうかだと思います。
もうひとつの変化は背面で、デュアルレンズが斜めに並んでることです。これはセンサーシフト手ブレ補正機構がカメラモジュールの中で大きなスペースを占めているためのようです。あとはこの斜めのレンズで、「このiPhoneは新しい方のiPhoneです」って周りの人にアピールできますね。またレンズそのものも、それを囲む正方形のモジュールも、去年より大きくなってます。
それ以外では、iPhone 13もiPhone 13 miniもiPhone 12と同じフラットな側面で、背面は(指紋が目立つ)キラキラガラス、白・黒・赤・ブルー・ピンクにシルバーとゴールドの合わさった「スターライト」の6色展開です。私がレビューしたのは黒のiPhone 13 miniとピンクのiPhone 13で、ピンクのほうは可愛いペールピンクでした。アルミのフレームはiPhone 12と同じく、それぞれの色にマッチングされてます。
OLEDディスプレイは去年より若干明るいんですが、リフレッシュレートはiPhone 13 Pro/Pro Maxみたいな120Hzじゃないので、スクロールはそこまで滑らかじゃないです。
Pro級のパフォーマンス
iPhoneの処理速度は毎年速くなるので、今年のiPhoneは史上最速です。A15 BionicチップはCPUが6コア、GPUが5コアで、他のスマホに大きく差をつけました。マルチタスクもゲームも楽々で、遅さを心配する必要はありません。って、去年もそうだったんですが、今年はさらに速くなってます。
Geekbench 5のグラフィックス性能を測るCompute Metalでは、iPhone 13とiPhone 13 miniのスコアはもっと高価なAndroidフラッグシップを大きく上回ってました(iPhone 13 miniが10,877、Samsung Galaxy Z Fold 3が4,684)。当然ながら、iPhone 13とiPhone 13 miniの合成ベンチマークスコアは、A14 Bionic搭載のiPhone 12とか12 miniより高くなりました。A15 BionicとiOS 15はハード・ソフト両面でバッテリー最適化に貢献し、バッテリーライフを伸ばすのに役立ってます。
A15 Bionicの性能っていうのは、たとえば120Hzのディスプレイみたいに、実際使ってA14 Bionicとの違いに気づくようなものかどうかはわかりません。でも、とにかく速いのは良いことですよね。
結局、iPhone 13買うべき?
iPhone 13/13 miniは、フラッグシップとしては魅力的なお値段です。グーグル謹製プロセッサー搭載のPixel 6がiPhone 13に対抗するような価格、性能、カメラなのか、すごく興味深いですね。
非Androidユーザーで、どのiPhoneを買うべき?と悩んでる人に対し、一律に返せる答えはありません。iPhone 13/13 miniが合ってるかどうかは、いくつかのファクターで決まります。
・iPhone 12 miniのサイズが好きで買った人で、iPhone 13 miniをキャリアの大幅ディスカウント、または無料で入手できる場合は、バッテリーライフのためだけにアップグレードする価値があります。暗い環境での写真性能、シネマティックモードも良いオマケとして楽しめることでしょう。ベースのストレージが64GBから128GBになってるのもうれしいです。
・今iPhone 12を持ってる人は、無料で手に入るとかじゃない限り現状維持でいいです。iPhone 12のバッテリーは十分だし、多分今回買っちゃうよりもiPhone 14を待ってたほうが良さそうです。
・iPhone 11以前を持ってる人は、iPhone 13 Proを検討したほうがいいです。バッテリーライフとカメラのアップグレードはそのあたりの世代より大きく増強されてて、ディスプレイも明るく、120Hzでぐっと滑らかになります。
去年のiPhone 12は、お手頃に思える内容でした。新鮮なデザインに5G接続、MagSafe充電、有機ELディスプレイといったProモデルの良いところが手に入りつつ、価格は10万円を大きく下回ってました。が、今年のiPhone 13/13 miniは事情が違います。バッテリーライフは良かったんですが、カメラ系の新機能はライトだし、超広角レンズは望遠ほど出番がありません。iPhone 13 Proのほうが、iPhone 13/13 miniにない機能が入ってるし、iPhone 12 ProとPro Maxみたいなカメラの差がなく、MaxにせずともiPhone史上ベストなカメラが手に入ります。
ただし「小さいiPhoneは今年のminiが最後」って増強もあるので、コンパクト命な人は今回買っといたほうが良さそうです。そうじゃない人は、iPhone 13 Pro一択で、ぜひ。