無料でも十分、良質なのがあります。
紙の書類のスキャンって、たまーに必要になりますよね。最近はスマホでいろんなスキャンアプリがありますが、例によっていろんなものがありすぎてどれがいいのかわからなかったり、無料だと思って使ってたら大事な機能が有料でがっかりしたり、といった事案が起こりがちです。
そこで、いろいろなガジェットを徹底比較してほとんどの人へのオススメをざくっと言い切ってくれることで人気の米国メディア・Wirecutter(from NYTimes)が、スキャンアプリのガチ比較をしています。その結果は…以下でどうぞ!
こう言うとショックを受ける人もいるかもしれませんが、今は会計士とか文書保存の専門家とかじゃない限り、ハードウェアのスキャナは必要ありません。今どきのスマホで使えるスキャンアプリは、それほど完成度が高いんです。
我々は35時間以上かけて20本のスキャンアプリをリサーチし、そのうち7本を実際テストした結果、余計なものがなく効率良くスキャンができる、Adobe Scanこそベストだと判定しました。シンプルに使えて、美しいスキャンを素早く取れて、高精度なテキスト認識機能も入ってます。さらにAndroidでもiOSでも、完全に無料です。
オススメのスキャンアプリたち
イチ押し:Adobe Scan(Android、iOS)
Adobe Scanは、人生にときどきやってくる文書をさくっとキャプチャ、みたいな使い方に最適です。税金関係の書類とか、何か買ったときのキャッシュバックの申込書とか、名刺とかをシンプルにスキャンできます。
Adobe Scanは、人生にときどきやってくる文書をさくっとキャプチャ、みたいな使い方に最適です。税金関係の書類とか、何か買ったときのキャッシュバックの申込書とか、名刺とかですね。CamScannerとか、この記事でアップグレード用のオススメに選んだScanProとかみたいに複雑でもパワフルでもないし、PDFしかエクスポートできません。でもシンプルということはものすごく簡単に使えるということで、スキャンしてできるファイルは他のスキャンアプリよりきれいです。スキャン結果はAdobe Document Cloudに全て自動保存されて、スマホからもタブレットからもパソコンからもアクセスできます。名刺には専用のモードがあり、スキャンするとスマホ等のデバイス上で連絡先を簡単に追加できます。
こちらもオススメ:Microsoft Office Lens(Android、iOS)
Office LensはMicrosoft Officeを使ってる人にはとくにオススメですが、(たいていの場合)きちんとフォーマットされたOCR結果が出てくるという意味で、どんな人にとっても信頼できるオプションです。
Adobe Scanもシンプルで良さげだけど、Microsoft Officeをよく使う人には、Microsoft Office Lensがよりオススメです。ユーザーインターフェースはAdobe Scanと同じくらいすっきりしてますが、出力はPDFだけでなく、Word文書とかPowerPointスライドでも可能です。スキャンのクリーンさはAdobe ScanやScanProほどじゃなく、共有オプションも物足りないかもしれません。でもテキスト認識精度は、欠点を穴埋めできそうなくらい高いです。
アップグレードするなら:ScanPro(Android、iOS)
ScanProは機能や共有オプションが豊富で、Adobe ScanやOffice Lensより使える場面が多くパワフルです。ただその分、とくにiOSユーザーには高く付きます。
ScanPro(ところどころで名前がSwiftScanとかScanbotになってます)はAdobe ScanとかOffice Lensより機能満載で、フォルダ管理とかファイル整理機能、スマートなファイル命名機能、iCloudとの同期、保存先を10数種類のクラウドサービスから選べる自由度などがあります。ScanProは本でも名刺でも写真でも、いろいろな文書タイプできれいなスキャンが取れます。OCRは数十言語に対応、精度は最上級でないにしろかなり良いです。ただiOSアプリはやや高めにつくサブスクリプションモデルで、サブスクリプションでないAndroidアプリはiOS版より機能が少ないです(他のオススメよりは豊富ですが)。なのでScanProは、プラスの機能がどうしても必要な人にだけ使う意味があると思います。
Wirecutterが信頼できる理由
私はカメラやプリンタ、スキャナといった画像処理ガジェットについて10年以上記事を書いていて、スマホのスキャンアプリも同じくらいの期間使っています。Wirecutterは2013年からスキャナのガイドをまとめていて、これまで累計170時間以上をリサーチとテストに費やし、ベスト中のベストを明らかにしてきました。そうした経験による知見が、この記事でのスキャンアプリのテストに生かされています。
この記事を読むべき人
スマホのスキャンアプリはほぼどんな人でも使えて、ほとんどの場合物理的なスキャナの代わりになります。もちろん、スキャナを持っていれば役立つタスクはまだまだたくさんありますが、スキャナを本当に必要とする人だったら、そのことはもうわかっているはずです(会計士さんとか、弁護士さんとか)。スキャナってあったほうがいいかな?と思ってるような人への答えは、ほとんどの場合、多分ノーです。
スキャナって要らないの?と思われるかもしれませんが、スマホ内蔵カメラが急速に進化したことで、最近のスキャンアプリは、たまに必要になる程度のタスクは完ぺきにこなせるようになりました。たとえばレシートとか名刺、法的文書、何らかの申請フォーム、といったものですよね。仕事のランチでレシートをさっとスキャンしたり、図書館で本を数ページキャプチャしたり、といった使い方です。
まだよくわからないんだけど?という人のために
専用スキャナが必要な人、その場合どういうタイプが必要かをさっくり解説しますね。
仕事の中で、公的文書とか契約書、法的文書を扱う人は、おそらく高精度なテキスト認識機能と、大量の文書をさばくための自動原稿送り機能が必須です。ポータブルな文書スキャナか、スキャナと自動原稿送り機能(ADF)のあるオールインワンプリンタがいいでしょう。
写真をよく撮る人、スクラップブックを作る人で、写真をたくさん持ってる人は、専用のフォトスキャナのほうが向いてます。
何らかの作品の保存目的で、超高精度・高解像度でスキャンしたい人は、フラットベッドスキャナが必要です。
上のどれにもあてはまらない人はまず、スキャンアプリをトライしてみましょう。
評価基準
モバイルスキャンアプリはGoogle Play StoreにもApple App Storeにも無数に出ていて、その多くが好レビューを受け、なんだか良さげな機能を載せています。でも他のジャンルのアプリもそうですが、それらの多くはジャンクです。
Wirecutterでは良い選択肢を絞り込むために、モバイルスキャンアプリの大事なポイントを以下のように考えました。
使いやすさ:スキャンアプリは何より使いやすくないと、やる気がなくなります。操作が直感的で、レイアウトに工夫があり、自動文書認識やキャプチャといった便利な機能のあるものを我々は探しました。
読み取り画質:スキャンの質はスマホカメラの画質に左右される部分もありますが、アプリ自体もかなり影響しています。解像度やフィルタはアプリによってさまざまで、文書の折り目や影などをうまく処理してくれるものとそうでないものがあります。
テキスト認識精度:良いスキャンアプリはOCR(光学文字認識)技術を使って、画像の中の文字を把握し、編集できるテキストとして文書ファイルに取り込みます。アプリの中には、テキストを生のテキスト(TXTファイルか、クリップボードのコピーか)としてエクスポートするものもあれば、フォーマット情報付きのRTFファイルとかDOCファイルにするものもあります。この場合、選択肢が多いほうがベターです。
共有オプション:良いスキャンアプリには、スキャンしたものとかOCR結果をいろんな方法で共有する便利な方法があります。メールやDropbox、Google Drive、Slack、プリンタ、FAX、などなどです。スキャンを自動でクラウドに保存してくれればさらにベターです。
各種フォーマット対応:スキャンするものはだいたいテキスト文書とかレシートとかですが、良いスキャンアプリにはもっとレアな文書、たとえばホワイトボードとか書籍、新聞や雑誌、または名刺にも対応していてほしいです。
セキュリティ:スキャンしたものをクラウド保存するのは便利ですが、保存先がそのアプリ開発者が運営するマイナーなサーバだったり、そういったサーバへの送信を強制するものだったりの場合は警戒しています。また、セキュリティとかプライバシーポリシーを公開していないアプリも同様に注意しています。最低限、そのアプリが同意なしにユーザーのデータを販売とか共有しないと明記されているかどうかをチェックしました。
注釈・編集機能:きれいなスキャンができたら、そこに書き込みたくなるものです。署名する部分にチェックを入れるとか、大事な部分をハイライトするとか、メモを書き込むとか、契約書に自分がサインするとかです。
価格:クオリティの高いアプリには多少お金を払ってもいい人と考える人が多いと思いますが、サブスクリプション制だったり、初期費用が5ドル(約500円)以上だったりのアプリは微妙です。高画質で便利な機能があってなおかつ無料なら、それは高く評価しました。
この記事の最初のバージョンでは、Androidでは6つのアプリ(ABBYY FineScanner、Clear Scanner、Microsoft Office Lens、ScanPro、Smart Doc Scanner)、iOSでは7つのアプリ(ABBYY FineScanner、CamScanner、ClearScanner、Microsoft Office Lens、Prizmo、ScanPro、Scanner Pro)をテストしました。さらに2019年のアップデートでは、これらに加えてAdobe Scan(Android、iOS)とGenius Scan(Android、iOS)を試しました。
テスト方法
我々はAndroidアプリをGoogle Pixel XLに、iOSアプリをiPhone 8に、それぞれダウンロードしました。無料バージョンがあるアプリの場合、有料バージョンにアップグレードしなくても使える機能だけで評価しました。我々としてはなるべく無料のものをオススメしたかったので、ここは大事です。
次に我々は有料バージョンをダウンロードし、スキャンに取りかかりました。各アプリでスキャンした文書は2種類で、ひとつは米国の税手続きフォーム(IRS 1099)、もうひとつはシンプルなテキスト文書で、同じ文を12ポイントから4ポイントまで複数のフォントサイズで並べたものです。OCRの精度と一貫性を見るため、同じものを3回スキャンしています。クラウドベースのOCRが使える場合、その性能がデバイス上のテキスト認識より明らかに高いのかどうかをチェックしました。その後上記のIRS 1099を再度スキャンして各アプリのバッチスキャンモードをテストし、このプロセスで引っかかる部分があるか、ページの並べ替えや再キャプチャがしやすいかどうかを確認しました。その後手書きのメモやホワイトボード、名刺、書籍、写真(光沢ありとマット両方)をスキャンして、素材による各アプリの処理の違いを見ました。
この作業の間、我々は各アプリの境界検知や自動クロップ、画像フィルタのクオリティを詳細に記録していきました。スキャンが終わったら、注釈や編集オプションを試して、各アプリがキャプチャした文書をどの程度いじれるのかを見ました。
最後に各アプリの共有オプションを精査し、引っかかる点がないかどうか(たとえばある種のファイルタイプは直接共有できないとか、自動アップロードができないとか、共有先が少ないとか)をチェックしました。
Wirecutterのイチ押し:Adobe Scan(Android、iOS)
たまに紙の文書をきれいなPDFにしたいだけ、しかも無料でできれば、という人なら、Adobe Scan以上の選択肢はないと思います。AndroidでもiOSでも使えます。Adobe Scanはデザインがシンプルでオプションも少ないので、ScanProとかCamScannerみたいな複雑で機能盛りだくさんなアプリより最初は見劣りするかもしれません。でも実際使ってみると、シンプルだからこそやりたいことが簡単にできるんです。
Adobe Scanではテキスト文書から写真まで、テストした中で一番きれいなスキャンが取れました。またスキャンしたフォームを埋める機能もあり(これにはAdobeの別の無料アプリも必要ですが)、テキスト認識精度も素晴らしいです。そしてスキャンしたファイルは自動かつ無料でAdobeのクラウドに保存されます。
Adobe Scanのレイアウトはとてもシンプルです。アプリを立ち上げるとすぐにカメラビューが立ち上がり、すぐに文書をキャプチャできるようになってます。また画面上では、ホワイトボードやフォーム、文書、名刺といったモードが選べるようになってます。自動キャプチャ、フラッシュ、すでにデバイスに入ってる文書や画像のOCRといったオプションもあります。
Adobe Scanはスキャン1枚でも、何十枚でもキャプチャできて、スキャンを止めるときは自分で停止して、編集画面に移行します。このプロセスは、複数ページモードのある他のアプリ(ScanProとか)と若干違うんですが、実質的にはほとんど変わりありません。編集画面では、4つあるフィルターの適用、自動クロップの調整、画像の回転、ページ入れ替えや追加ができます。ライブラリのビューもシンプルで、スキャン結果がグリッドまたはリストで表示され、名前順か日付順で表示できます。
OCRは19言語に対応していて、ScanProとかABBYY FineScannerよりは少ないですが、これでも世界の多くの人口をカバーしていて、日本語も入っています。精度は非常に高く、フォントサイズ8ポイントまでは完ぺきに読み取れていて、一般的なフォントサイズではクラス最高とされるFineScannerと同等の結果でした。OCRをすごく重視する人、細かい文字をスキャンする人なら、FineScannerとか物理的な文書スキャナのほうが高精度なのでいいと思います。でもどちらもAdobe Scanよりはだいぶお金がかかります。
Adobe Scanの自動クロップはしっかりポイントを捉えていて、白い文書を暗めの背景の上でスキャンしていれば、ごくたまに調整が必要になるとしても少しだけでした。ただスキャンするときにおかしな角度で撮ったり、背景とのコントラストが低かったりする場合、クロップの境界を調整する必要が出てきます。その場合も、拡大ビューで文書の角を見つけやすくなっています。
他のアプリと違い、Adobe ScanのAuto Colorフィルターは正確な色やコントラストを(小さな文字でも)残していて、白い部分は明るく、紙の折り目やシワの影は消しています。テストした中で唯一、オフィス文書に入れた犬の写真を正確に再現できていました。他のアプリだと写真の中の空や犬の色が抜けてしまってましたが、Adobe Scanだけは自然な色の階調をしっかり再現していました。写真のスキャンでも同様でしたが、光沢のある写真の場合はグレアが出ないように注意する必要がありました。写真の取り込みにスキャンアプリはお勧めしませんが、いざってときに使えるのはナイスです。
AdobeのFill&Sign機能もすごく良いと思います。これは、フォームをスキャンしてAcrobat Readerアプリに送り、チェックボックスとか項目の穴埋めとか指(または画像化したサイン)での署名ができるようになる機能です。素早く使えて直感的で、私は最近買ったPC電源ユニットのキャッシュバックフォームを埋めてみたんですが、それをプリントアウトすると元の用紙と驚くほどそっくりでした。フォームをダウンロードしたものがあれば、直接インポートすることもでき、いちいちプリントアウトしてスキャンしたりは不要になるし、文書としてもさらにきれいになります。
Adobe ScanでのスキャンはすべてPDFとして保存され、自動でAdobe Document Cloudにアップロードされます。このコピーはAndroidやiOSの共有メニューから共有したり、Adobe Document Cloudでダウンロードできるリンクを送ったりできます。スキャンしたものはJPEGでのエクスポートも可能なので、テキストメッセージに貼り付けたり、Instagramにあげたりもしやすくなります。
スキャンしたものをAdobeのサーバに自動アップロードするのは不安という人も中にはいるかもしれませんが、我々はAdobeはもっとも安全なサービスのひとつだと考えます。心配な人には、Adobeはセキュリティポリシーを詳細に開示しています。もっと安全なストレージがいいとか、単にAdobeが嫌いという人は、他のアプリ(たとえばScanPro)だと自動保存先のストレージを選択できます。
使うのをやめるほどじゃない欠点
Adobe Scanはシンプルで単刀直入ですが、シンプルってことは、理想的なものに求めるもののいくつかがないってことでもあります。一番わかりやすいのは、Adobe製なので、きわめてPDF中心にできていることです。JPEGでのエクスポートもできますが、OCRで取り込んだテキストをWordとかPowerpointとかテキストファイルにするオプションはありません。もうひとつ、クラウドストレージのオプションもAdobe Document Cloudだけです。もちろん個別には、デバイスからアクセスできるストレージにスキャン結果を送れますが、Adobe Scanから直接たとえばGoogle DriveとかDropbox、Evernoteとかに送れるほうが楽ちんです。
あとはクラウドといえば、クラウドへの自動アップロードをオフにもできるほうがいいです。Adobe Scanで取ったスキャンは自動でAdobeのサーバにアップロードされるので、セキュリティが気になる人には不安なはずです。たとえば資産関係の記録とか法的文書、ビジネスの契約書といったものに関しては、悪意のある第三者が絶対にアクセスできない状態であってほしいですよね。
またAdobe Scanのファイル管理は限定的で、検索機能ではスキャンしたものの名前(手動で編集が必要)しか見ていません。もっとパワフルなスキャンアプリ(たとえばScanPro)では、スキャン結果を整理するフォルダを作れたり、スマートなファイル命名をしてくれたり、タイトルだけじゃなくOCRで抽出したテキストもインデックス化して検索可能にしています。
こちらもオススメ:Microsoft Office Lens(Android、iOS)
Adobe Scanがほぼ完全にPDFにフォーカスしてるのに対し、Microsoft Office Lensは当然ながらMicrosoft Officeとの連携を重視しています。OCRの精度は高く、WordやRTF、検索可能なPDFとしてもエクスポートできます。名刺をスキャンする場合、連絡先情報を認識してOneNoteにエクスポートでき、ホワイトボードモードではPowerpointのスライドも作れます。ただし画像フィルターはAdobe Scanのものほど効果的じゃなく、AdobeのFill&Signのようなフォーム入力機能もありません。なのでOffice系の出力が必要なければ、Adobe Scanのほうがベターだと思います。
Office Lensのレイアウトも素直で、余計な要素はほとんどありません。立ち上げるとすぐカメラが開き、画面の下には4つのスキャンモード(ホワイトボード、文書、名刺、写真)が表示されます。Office Lensは文書を自動認識してそのアウトラインをオレンジのボックスで表示しますが、自動キャプチャ機能はないので、シャッターボタンは自分で押す必要があります。スキャンを取ると、Office Lensはそれを自動でクロップし、テキストやペンツールで注釈を入れるオプションもあります。
Office Lensは、WordやPDFでエクスポートするファイルには自動でOCRを動かします。DOCSフォーマットでできたスキャン結果は素晴らしく、フォーマットはきれいで、テキストは6ポイントまで正確に認識していて、ScanProより高くAdobe Scanとは同等、クラス最高とされるABBYY FileScannerにも近い結果でした。OCRに関して唯一の問題は、スマホやタブレットでDOCXの出力を開くにはWordアプリが必要になることです(無料ですが)。またはPDFの出力をデフォルトのPDFリーダーで開く手もありますが、その場合はAdobe Scanを使ったほうがいいです。Wordでファイルを開いたら、それを任意のアプリで共有できます。OCRファイルの編集や保存をするには、MicrosoftアカウントでWordにサインインする必要があるので、その点注意です。
Office Lensで取ったスキャンは、他のスキャンアプリほどクリーンじゃありませんでした。白があまり明るくなく、フィルターは影を排除しきれてなく、自動クロップでも背景が若干残りがちでした。たまにものすごい外してて、背景の机が大きく残ってることもありました。クロップは調整できますが、他のスキャンアプリと違い、Office Lensには細かい調整のための拡大ビューがありません。
Adobe Scan同様、Office Lensは自身のエコシステムを強く重視しているので、追加機能は欠けています。ファイル管理機能はほぼ存在せず、ファイルをパスワード保護するオプションもなく、スキャンを他のクラウドストレージに自動アップロードする方法はありません。
アップグレードするなら:ScanPro(Android、iOS)
ScanPro(別名SwiftScan)は、素晴らしいスキャン品質と構成度なOCRをロジカルで使いやすいレイアウトに組み合わせています。Adobe ScanやMicrosoft Office Lensより機能が豊富で、ファイルの整理やファイル命名のテンプレート、PDF注釈機能、多様なクラウドサービスへの自動アップロード、PDFの暗号化などなどが可能です。
ただiOSバージョンは、ここでオススメするフル機能のScanPro+がサブスクリプション制で月650円または年間3,800円かかり、Adobe ScanやOffice Lensに比べてはるかに高額です。Android版は買い切りで1,180円と、1カ月を超えて使うならiOS版よりお手頃ですが、iOSバージョンの機能の一部がありません。どちらにしても、絶対にこの追加機能を使いたいってわけじゃない限り、Adobe ScanやOffice LensでなくScanProを選ぶ必要性はないと思います。
スキャンアプリのレイアウトはたいてい似たりよったりですが、ScanProはエレガントなシンプルさで、我々のお気に入りです。立ち上げるとカメラが立ち上がり、目の前の文書をキャプチャします。立ち上げ時にライブラリを表示するようにとか、自動キャプチャをオフにとかの設定もできます。複数ページスキャンモードとか、横長の文書ではカメラを回転させるように通知が出ることとか、カメラの角度が曲がってるときに注意してくれたりするのは良いと思います。
ただ、Adobe ScanとかOffice Lensにある、コンテンツの種類による専用のモードがありません。またActionsという独自機能では、OCR結果からWebのURLやメールアドレスといったアクションできる要素を自動抽出するんですが、これは実用上はほんのちょっと便利、くらいです。
キャプチャした文書は編集画面に行き、そこでいろんなフィルターをかけたり、自動クロップを調整したり、回転したり、ファイル名を付けたりできます。ファイル名に関しては、スキャンに毎回名前を付けるのが面倒な人のために、独自の命名テンプレートも設定できます。ライブラリビューはわかりやすく、スキャンしたものがスキャンの日付でグルーピングされてます。そこから各スキャンを開き、認識されたテキストを見たり、PDFに注釈を入れたり、共有したりができます。フォルダを作って整理することもでき(この機能は、我々が試した他のスキャンアプリにはありません)フォルダをライブラリビューの一番上に表示するオプションもあります(ただしフォルダが使えるのはiOSバージョンのみ)。
ScanProはすべてのスキャンに自動OCRを動かし、対象言語はAndroidで104言語、iOSで60言語です。チェロキー語とか中世フランス語とかも自動認識できます。テストではその結果はハードウェアの文書スキャナには及びませんでしたが、スキャンアプリの中ではトップに近い結果でした。スキャンアプリでのベストなOCRはABBYY FileScannerで、Adobe ScanとMicrosoft Office Lensがそれに続き、ScanProはそこには届かないんですが、ちょっとしたOCRには十分です。
自動クロップ機能は安定して素晴らしく、境界はクリーン、文字はまっすぐでした。まれに失敗しても、クロッピングツールがあって文書の境界を拡大表示でき、正確に微調整できます。「Magic」フィルターがふたつ(Magic ColorとMagic Text)あり、コントラストの強調や影・折り目の排除をして、クリーンで白い背景と、クリアで読みやすい文字を残します。ScanProは写真に関しても他のアプリよりベターで、Colorフィルターでは影やその他の余計なものを排除しつつ、自然な色とコントラストを再現していました。スキャンアプリでの写真コピーはお勧めしませんが、急に必要なときに使えるのは良いと思います。
ScanProではスキャンしたものをワンタッチでメールでき(PDFのみ)、共有ボタンを押せばAndroidやiOSの共有メニューでPDFかJPEGでの共有ができます。OCR結果はTXTファイルかクリップボードへのコピーで共有できます。さらに設定すれば、スキャン結果はDropbox、Google Drive、OneDrive、OneNote、Evernoteといったメジャーなクラウドサービスだけじゃなく、わりとニッチな場所(FTPサーバとかWebDAVとか)にも自動保存できます。さらに有料ですがスキャン結果をFAXで送ることもでき、1ページあたり1コイン=120円がかかります。この「コイン」は1枚でも、10枚とか100枚とかのパックでも(それぞれ860円、4,400円)購入可能で、たくさん買うほどお得な設定です。
ScanProは他のアプリと違い、スキャンしたデータを自社サーバに送ったり、OCRをクラウドで動かしたりしていません。なのでセキュリティリスクは相対的に低いです。iOS版ではPDFの暗号化もでき、ファイルをパスワード保護できます。
ひとつ注意点は、ScanProはiOS版もAndroid版も十分良いのですが、Android版にはiOS版のいくつかの機能がありません。iOS版だけの機能は、PDFの暗号化のほかに、パスワードや指紋を使ったアプリのロックや、アプリ内のフォルダ機能があります。ScanProを最近買収したMaple Mediaによれば、彼らはAndroid版をiOS版に近づけようとしてるそうですが、今はまだそれができてません。
その他の競合アプリ
2019年、人気スキャンアプリのCamScannerのAndroid版にトロイの木馬が入っていたことが発覚し、Google Playから削除されました。そのトロイの木馬は他のマルウェアも拡散して、余計な広告を表示したり、モバイルアカウントからお金を抜き取ったりする可能性もありえるものでした。我々は2018年にCamScannerをテストして非常に強力だと評価してましたが、プライバシーやセキュリティポリシー全般に不安があり、最終的にはピックアップしていませんでした。またCamScannerのベストな機能であるクラウドストレージとクラウドOCRを使うと、データはCamScannerのサーバに送られます。CamScannerの運営会社は上海にあって、サーバは「中国またはサービス上適切な地域」にあるとされていて、スキャンしたものをどんどん送るのはちょっとどうなのかなと思われます。なのでWirecutterとしては、仮にAndroid版からトロイの木馬が完全に削除されたとしても、お勧めはしません。
モバイルアプリでのOCRの精度にこだわるなら、ABBYYのFineScanner(Android、iOS)が検討の価値ありです。OCR精度はずば抜けて高く、Adobe ScanやMicrosoft Office Lens、ScanProより一貫して正確です。ただその分価格が高いのと、テキスト文書のスキャンに限定されています。ScanProと同様に、FineScannerにはサブスクリプション版と買い切り版があります。機能的には同じですが、サブスクリプション版は毎月650円または年間2,300円、買い切り版は7,500円です。
Genius Scan(Android、iOS)はとても良く、機能満載のスキャンアプリですが、OCR機能に問題がありました。iOS版はスペースの認識に苦戦していて、PDFからテキストを抽出しても区切りがなく、文字の連続になっていました。Android版には当時、OCR自体ありませんでしたが、最近追加されました。次のアップデートでは、こちらもテストする予定です。
Smart Doc Scannerはこのガイドの前バージョンでお手頃版のオススメにしていました。完全に無料で(広告を非表示にするためにお金を払うのはありますが)、機能はよくこなれていて、自動クロップも正確、エクスポートのオプションもいろいろあります。ただOCR機能が壊れていて、OCRライブラリをダウンロードしようとすると「サーバが応答しません」とエラーが出ます。Google Play Storeのレビューを見ると、デベロッパーが問い合わせに反応しないということなので、このアプリは放置されてしまったのかもしれません。
AndroidではClear Scannerもテストしましたが、ユーザーインターフェースがオススメのものほど洗練されておらず、自動文書検知やキャプチャ、バッチスキャンモード、文書全体のOCRを一度に取る機能などがありません。なので質の高いスキャンを取るのが難しくなっています。
iOSでは、Scanner Proもテストし、そのインターフェースやテキスト文書でのパフォーマンスは良いと思いました。が、それ以外のメディアのスキャン結果は残念でした。
Prizmoもチェックしましたが、インターフェースが見にくく使いにくく、自動クロップも不正確で、共有オプションは少なく、フィルターも安定しないことなどから低評価となりました。
あとはDropbox BusinessとEvernote Scannableのテストも検討しましたが、結局対象にしませんでした。どちらももっと広範囲なサービスへのサブスクリプションをしないと、OCRも含めたスキャン機能全部は使えないからです。でもすでにサブスクリプションに入っている人で、OCRは必要ないなら、彼らのスキャンアプリも見てみる価値はあります。
iOSデバイスに入っているApple Notes(メモ)はシンプルなスキャンができ、使いやすいクロップツールと4つの効果的なフィルターがあります。が、今回オススメしているものより機能が少ないです。OCR機能はわりと最近までずっと入っておらず、このガイドの基準ではそれだけで対象外でした。iOS 13でOCR機能が入りましたが、他のスキャンアプリとは動きが違います。まず自動で、Notesはスキャンした画像全部からテキストを認識し、iOSの検索バーから簡単に検索できます。iOSのNotesはMacのNotesと動機し、パソコンでも検索ができます。でもOCRしたテキストはテキストファイルやWord文書としてエクスポートできず、単に検索できるようにインデックス化されているだけです。スキャンした文書を探したいだけなら便利ですが、生のテキストを使いたい場合には役に立ちません。
他にもいくつか、OCRがなかったり、機能が欠けてたり、他のアプリのクローンだったり、セキュリティポリシーがあやしかったり、他のものより高すぎたりで低評価にしたアプリがあります。それらは、Fast Scanner (Android、iOS)、Notebloc(Android、iOS)、Tiny Scanner (Android、iOS、訳注:日本だとiOS版は610円の有料版しかない模様)、TurboScan(Android、iOS)です。
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