■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は2020年発売された5Gスマートフォンの中から、買い替え候補で有力なモデルについて議論します。
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iPhone 12 miniの登場でミドルレンジAndroidはピンチか
房野氏:5G対応端末も多く発売されましたが、価格に対して良く仕上がっているモデルはありますか?
房野氏
石川氏:自分はiPhone 12 miniが好印象でした。スマートフォンは大画面化の流れがある中で、逆行する衝撃。日本人は小さい端末を好む人が多いともいわれているので、このサイズはポイントですね。もちろんバッテリー容量など不安はありますが、その辺はAIがうまくコントロールしてくれそうですし、5G対応でこのサイズは魅力的です。
石川氏
石野氏:石川さんはiPhone 12 miniのレビュー記事への力の入れ具合が半端なかった。気に入っていることが、読んでいるこちらまで伝わってきました(笑)。
石野氏
石川氏:やっぱりiPhone 12シリーズの注目はminiですからね。一方で、画面サイズや価格を考えるとiPhone 12 Pro Maxを勧めるのは少しためらってしまいます。
iPhone 12 Pro Max
法林氏:僕はiPhone 12シリーズの4モデルの中ではiPhone 12 Pro Maxがいいと思うけどね。もちろんでかいけどさ。5Gスマートフォンをいろいろ使ってみて、「これは最高傑作ではないか?」と思ったのはGalaxy S20+ 5G。薄くて持ちやすいし、カメラ性能もいい。防水防塵とか、おサイフケータイとか、ひと通りの機能をしっかり備えているので、気に入っています。
Galaxy Note20 Ultra 5Gもいいんだけど、サイズがちょっと大きいので、そこは引っかかります。どちらにしても、2020年はGalaxyシリーズが豊作だったなという印象です。
Galaxy S20 5Gシリーズ
Galaxy Note20 Ultra 5G
法林氏
石川氏:やっぱりGalaxyは5G端末を早いタイミングから作っているだけあって、完成度が高いと思います。派生モデルにはなりますけど、Galaxy Z Fold2 5GもほかのGalaxyと世界観を共有して好感を持ちました。HUAWEIがグローバル市場で厳しい状況に追い込まれている中、サムスンが今後、飛躍していくのかなって思います。ミドルクラスのGalaxy A51 5Gも売れそうな感じがしますし、「5G時代はGalaxy時代」って感じになるかもしれませんね。
Galaxy Z Fold2 5G
Galaxy A51 5G
法林氏:Galaxyはユーザーのニーズにしっかりと応えてきたと思います。10万円オーバーの製品が多いので、決して安いとはいえませんが。
石野氏:10万円ぎりぎりの価格を考えると、iPhone 12 Proはきちんと仕上げてきた印象です。5Gの対応バンドが広くて、デザインもかっこいい。あと、動画性能が驚きのハイレベルなので、お得感があります。それ以外で気に入った端末として、Xperia 1 IIがあります。でも、少し価格が高いかな?
iPhone 12 miniはコンパクトなのにしっかりと高性能を維持しながら、しかも7万円程度で買えて、Appleストアで買うとさらに安くなったりする。費用対効果的にもいい端末だと思います。
Xperia 1 II
房野氏:iPhone 12 miniはみなさん、高評価ですね。
石野氏:個人的にはあまり好みのサイズではないんですけど、処理性能、カメラ性能、ディスプレイの美しさなどを考えると、「こんな低価格でできるのか。アップルも変わったな……」と思いました。昔は高級路線ひと筋というか、いきなり安いモデルを導入することが少なかったので。iPhone 12 miniが7万円程度で発売されたので、ミドルハイクラスのAndroid端末はかすんで見えてしまう。それくらいのインパクトがありましたね。逆に、その下を狙いにいったTCLのTCL 10 5Gは頑張っていると思います。3万9800円ですから。
TCL 10 5G
法林氏:あと、良かったと思うのはXiaomiのMi 10 Lite 5G。あれは価格や性能を見ても良くできていたと思います。
Mi 10 Lite 5G
石野氏:要は、安さ・コストパフォーマンスをアピールしようとなると、3万~5万円程度まで価格を下げないと、iPhone 12シリーズと真っ向勝負になるので、ミドルハイクラスのAndroid端末は厳しい戦いを強いられると思います。
石川氏:キャリアが端末の割引を適応しにくい中で、5G端末を安く買おうとすると、中国メーカーのスマートフォンが主役になります。でもこれって、本当に総務省がやりたかったことなのかな?
房野氏:AQUOS sense5Gは3万円台という話ですよね。
AQUOS sense5G
石野氏:2021年発売の端末ですね。2021年といってももうすぐですが。
石川氏:AQUOS sense5Gが2020年内に発売されていれば、めちゃくちゃ売れてたかもしれませんね。
法林氏:さっき少し名前が挙がったけれど、Galaxy A51 5Gは触ってみたら、そつない出来。必要な機能はほぼひと通り揃っていて、しかも安い。auでは少し高くなるけど、オンラインで買うと1万Pontaポイントが付与されますしね。ドコモなら5G乗り換え割で1万円程度安くなります。
房野氏:Google Pixelはどうでしょうか。
法林氏: Google Pixel 4a(5G)とGoogl Pixel 5があって、僕はGoogle Pixel 5のほうがまとまりがいいと感じています。メモリカードがないなど、不足を感じる部分もありますが、完成度は高いです。
Google Pixel 4a(5G)
Googl Pixel 5
石野氏:そうなんですけど、Google Pixel 5と同じ値段を出すと、iPhone 12 miniが買えちゃうんですよね。
法林氏:個人的にはiPhone 12 miniよりもGoogle Pixel 5です。指紋認証とか、ユーザーが昨今期待している機能があまり搭載されていないiPhone 12シリーズは、あまり魅力的ではないです。聞いたところによるとiPhone 12シリーズがあまり売れていないという話もあります。電源アダプターが同梱されず、Lightning×USB Type-Cの充電ケーブルだけしかないことに対する文句もあるみたいです。
石川氏:Pixelに話を戻すと、もう少しやり方があったんじゃないかなとは思います。
法林氏:発表するタイミングの悪さは感じたよね。iPhoneが例年より1か月ずれて、微妙なタイミングでバッティングしてしまった。
石野氏:あとは、ドコモとの関係を修復しないといけないかもしれませんね。ドコモにもっと売りやすい端末だと思わせないと、日本では難しい。
石川氏:ソフトバンクとauで取り扱っているけれど、auはGoogle Pixel 5だけだし。あとGoogle Pixel 4a(5G)とGoogle Pixel 5を同時に出すのはどうなんだろうって。
法林氏:同時発売はあまり良くなかったね。
石川氏:ややこしくなりましたからね。
法林氏:せっかくいいスマートフォンに仕上がっているのに、発売スケジュールなど細かい仕組みがうまくかみ合ってない印象はあるので、もったいないですね。完成度は高いのに。
Googleの方向性として、ハイエンドの設定を避けて、より多くのユーザーにGoogleのサービスを使ってほしいという方向性を示したことは評価できます。この考え方にGoogleが至ったことに意味があると思います。
石野氏:ハードのスペックをいたずらに上げず、新機能を安く提供するっていうのは、Googleらしくていいと思うんですけど、それをまとめてスマートフォンにすると、少し地味な存在になってしまいますよね。
石川氏:スマートフォン市場として難しい時期に来ていると感じるのは、ハードをゴリゴリにハイスペックにすると、10万円台、さらには20万円台と、端末代が高くなってしまうので、売るのも買うのも難しい。ボリュームゾーンはSnapdragon 765を搭載した7万円前後くらいの製品だとすると、そこからさらに差別化が必要でしょうね。中国メーカーはより安くという方向を打ち出しています。シャープあたりはハイエンドモデルも扱うけれど、“売れるハイエンドとは何か?”って悩んでいると思います。
石野氏:そういう意味だと、LG VELVETは面白い。低価格だし、本体だけでもキレイで高性能な端末なのに、ドコモは2画面使用を前提にしている。“キレイなスマホ”だけではパンチが弱いという判断なんでしょうね。まぁ7万円程度の価格でデュアルスクリーンという設定は、ユーザーから好感されるかなって思います。
LG VELVET
2020年のスマートフォンは動画に注目!?
房野氏:デザインで気になった端末はありますか?
石野氏:Galaxy Z Fold2 5Gですかね。Xperiaは薄くてかっこいいですし、iPhone 12は金ピカでかっこよかったりしますけど、折り曲げられる端末はデザインの方向性に幅が出ますね。
ただし、Galaxy Z Flip 5Gのように、通常のスマートフォンを縦に折る意味はあまりないかもしれません。わざわざ折りたたまなくても、ほとんどのスマートフォンはポケットに収まりますからね。
Galaxy Z Flip 5G
石川氏:Galaxyシリーズの完成度は上がりましたが、一方でカメラ周りが派手すぎるかもしれません。
石野氏:そうですね。Galaxy Note20 Ultra 5Gなんてかなり出っ張ってますから。毎年Noteシリーズの買い替えを楽しみにしていたのですが、カバーを付けるとはいえ、さすがにこれはちょっと……とは思いました。
法林氏:僕はメイン端末としてGalaxy Note20 Ultra 5Gを買いましたよ。
石野氏:Xperia 1 IIのデザインは頑張っていましたよね。ノッチがなくて、iPhoneを先取りしたようなスクエアなスタイルで、薄い。Xperia 1 IIを使った後にiPhone 12 Proを持つと、形状が似ている割に分厚い印象があります。Xperiaが薄型化で攻めたのは特徴的でしたね。
房野氏:軽さも魅力ですね。
石川氏:自分はXperia 5 IIのほうが気に入っています。昨年のXperia 1、Xperia<5の発売ではXperia 1を購入したのですが、2020年もXperia 1 Ⅱを購入した。なんでXperia 1のほうを買っちゃったんだろうって思ってます(笑)。毎年その後悔をくり返していますけどね。
Xperia 5 II
法林氏:Xperiaは確かにすごいけど、なんとなく、心がときめかないんですよ。Xperiaの方向性は、自分が求めている方向性には遠い気がするんですよね。
石川氏:大衆向けじゃないというか、クリエイター向けに突っ走ってますからね。
法林氏:クリエイター向けに突き抜けるのはいいんだけど、実機を手にした時に、これを使いたいっていう強い欲望が今ひとつ起きない。。
石野氏:僕は2020年に発表されたXperiaをかなり気に入りました。カメラも使っていて楽しいです。キャリアモデルを買いましたが、SIMフリーモデルでおかわりしたいくらいです(笑)
石川氏:カメラの話でいうと、Android全体の問題なんですけど、撮ったコンテンツを編集したり取り出したりするのにひと手間かかる。そこが大変。
法林氏:それはもう全部のスマートフォンがそうだよね。特に動画はもう、どうにもならない。例えばiPhone 12の動画性能は優秀だけれど、4Kで撮影しようがDolby Visionで撮影しようが、スマートフォンの中だけの話になっていて、それを取り出すという問題を解決できていない。
石野氏:意外と、4Kで撮影した動画をテレビで撮影しようとするとカクついたりしますからね。自宅のテレビはDolby Vision対応なので、試しに再生しようとしたら音が出なかったりとか、ちょっとした互換性の問題はあります。
法林氏:iPhoneでもAndroidでも同じなんだけど、動画を撮った後の活用をどうするか、その問題は常にあります。ユーザーが生活する中で、スマートフォンの動画撮影を有効に利用するシーンをどうやったら作れるのか。映像がキレイ、キタナイとか、そんな次元の話ではなくて、動画ファイルの取り回しの問題。
石川氏:そういう意味では、iPhoneで撮影したものをMacで開く時に、AirDropでつなぐとかなり早くて楽。HUAWEIのスマートフォンがしめだされていなければ、ノートパソコンと「HUAWEI Share」をつなげる機会がもっと増えていたかも。サムスンとかLGがもう少し頑張ってパソコンを日本で販売してくれればいいんですけど。コンテンツの容量がますます大きくなっていく中で、撮影はスマートフォン、編集はパソコンという機器の切り替えが重要で、その連携のスムーズさが求められる。今後、スマートフォンメーカーはパソコン製品の開発も必要になってくるでしょうね。
石野氏:高画質の動画が撮影できても、それを見る環境の設備が難しくなってきます。
法林氏:動画を撮影した人は、映像を見る人に感動を伝えたいはずなんだけど、その流れがきちんと成立できていない。何を共有したいか、そこをしっかりと考えなければいけない時代で、Googleでもほかのメーカーでも構わないけれど、動画の共有を標準化する方向性を導き出さなければいけない。今は撮るだけでなってしまっている。
石川氏:本来5G時代は、自分のコンテンツをクラウドへアップロードして自由に楽しむ環境になるはず。どのメーカーが実現するか、注目ですね。
石野氏:YouTubeはHDRに対応しているので、HDR画質であればアップロードして楽しめますね。
石川氏:本来、Googleが作るPixelが、超キレイな動画を撮れるハイエンドなスマートフォンになっていればいいんですけど、Pixelはミドルクラスに舵取りした。
法林氏:高画質の動画を、ユーザーは本当に必要としているのか?
石川氏:撮影者はキレイな映像を収めて満足できますけれど、その場に行ってない他人が、例えばキレイな夜景を見せられても、「ふーん」って感想で終わってしまう。
法林氏:その通り。
石野氏:iPhoneのDolby Visionは、その場にいない人が見ても感動できるかもしれませんね。Xperiaは静止画撮影に頑張っている割には、動画のできがあまり良くなくて、HDRで撮ろうとすると全体が暗く映ってしまう。iPhoneはしっかりとチューニングされています。
法林氏:サムスン、HUAWEI、Xiaomiあたりが撮影機能で競いあったここ数年間があり、その後ミドルレンジの価格のスマートフォンでも、ポートレート撮影などの高度な撮影が当たり前に撮れるようになった。じゃあ今度は動画も充実させようって話になっているけれど、そもそも何のために高画質の動画を撮影するのか、その目的部分が解決していない。
撮った映像を人に見せられないなんて、そもそも撮る意味がないんだけれど、じゃあ動画の機能が不要かといわれると、YouTuberとかTikTokをするなら、動画の機能でスマートフォンが選ばれたりする。でも、ハイエンドのスマートフォンで撮影しても、ミドルレンジのスマートフォンで撮影しても画質にあまり差が出ないなら、動画性能の向上にメーカーが開発ソースを割くのが難しくなってくる。
石野氏:子供の動画をHDRでキレイに撮影して、祖父母に見せたいという欲求はありますけどね。
石川氏:シニア世代にHDRの動画を見せて感動を共有できるのかなぁ。
房野氏:とにかく2020年は動画に注目の1年でしたね。
石野氏:本当にそれくらいiPhone 12 Proの動画に感動したんですよね。なんでこんなにキレイなんだろうって。でも、パソコンで見ると、「なんだこれ。普通じゃん」って落胆しました(笑)
HDR対応のパソコンで見ましたが、iPhone 12 Proの画面で見るほどキレイに映らないんですよ。iPhoneはディスプレイ側もチューニングされているので、その違いが出てしまうのかもしれませんね。
法林氏:1億何百万画素とかいわず、1200万画素でセンサーを大きくするといった方向で、iPhone 12シリーズはチューニングされています。Xperiaも同じ方向性で、これは間違っていないと思いますが、ユーザーが購入する時に、1200万画素と1億800万画素のスマートフォンをそれぞれ並べられると、どっちにひかれるのかな。その辺はメーカーも上手にユーザーへ提案しなければいけないですね。
石野氏:昔のスマートフォンの画素数は、100万画素、1000万画素といったレベルで比べられましたけれど、今や、1000万画素と1億画素を比べろっていわれる。じゃあ、1億画素のスマートフォンに魅力を感じるかといわれると、数字だけで興味をひくことはないんじゃないですかね。
法林氏:いやいや、意外と引っ張られるもんだよ
石川氏:だからこそサムスンは一生懸命やっていると思いますよ。
法林氏:女性陣に、「これが1億800万画素のスマホだよ」って説明したら、「お肌が鮮明に映りすぎるから、あまり撮られたくない」って言われました。それくらい、一般の人にとって画素数っていうのは1つの基準になってきているんじゃないかな。
石川氏:世間的にはわかりやすい指標になってきているけれど、スマートフォンの撮影の世界で画素数って二の次になってきていて、主体はAIの性能に移ってきています。センサーサイズの違いさえ、超越するようになってきている。ユーザーとメーカーがどこを重視するか?
石野氏:iPhone 12 Pro Maxのふがいなさというか(笑)
iPhone 12 Pro Max
石川氏:そうですね。iPhone 12 Pro Maxの広角レンズだけセンサーサイズが大きいはずなのに、iPhone 12 Proと撮り比べて、仕上がりの差がほとんど出ないという現象が起きてます。
法林氏:ちょっと思ったのは、iPhone 12 Pro MaxとiPhone 12 miniの発売が遅かったのは、チューニングが完璧にできていないからではとも思ったんだけど……。
石川氏:あれはマーケティング的にずらしただけじゃないですかね。4機種同時に発売したら情報が集中しちゃうので、あえて1か月ずらして、長期的に盛り上げようとしたような気がします。
石野氏:AIなどを活用して撮った映像を後処理する技術、“コンピューテーショナルフォトグラフィ”を駆使すると、今までのスマートフォンのカメラではあり得ない写真になるじゃないですか。青空と地面が両方鮮明な色合いだったりとか。センサーサイズが小さくても、AIの力でそれだけキレイに撮れちゃうんですよね。
石川氏:記憶色と記録色というか、AIの力で人間がキレイと思える写真に仕上げられてますね。
石野氏:ダイナミックレンジはカメラより人間の目のほうが大きかったりするじゃないですか。人間は記録として見ている時は空と建物を別々に見ていて、記憶の中で勝手に合成していたりします。それをAI使うとカメラでできるようになってきている印象です。
房野氏:安価なモデルのカメラはどうですか。
法林氏:ものすごく良くなってきていると思います。この1年だけで見てもかなり進化していて、3万円の端末でもかなり優れた写真を撮れるようになっています。
石野氏:4つの小さなピクセルを自動的に、1つの大きなピクセルに融合する「4-in-1ピクセル技術」で、低価格のスマートフォンのコンピューテーショナルフォトグラフィが良くなりましたね。
法林氏:昔はHUAWEIくらいしかやっていなかったんだけど、いろんな会社がやるようになったので、安いスマートフォンでもカメラ精度がかなり上がっています。
石野氏:3万円台の端末でも見事な夜景が撮れたりしますね。
石川氏:逆にいうと、ハイエンドモデルは、違いを示すのが難しくなってきています。
石野氏:Xperiaがマニュアルカメラを積み、人工知能ではなく人間の知能に委ねたのは、逆転の発想で面白かったです。人間力を試されている気がします(笑)
2020年のサムスンにはイノベーションが詰まっている
房野氏:最後に、オンリーワンと思えた5G端末や機能はありますか。
法林氏:僕はGalaxy Note20 Ultra 5Gです。これの「オーディオブックマーク機能」。自分が使うかどうかっていうのはまだわからないけれど、ユーザーが「こういうシーンで便利かも」と想像できる機能をしっかり搭載していることが偉いと思います。
石野氏:iPhone 12 Pro Maxはサイズ的に、Apple Pencil対応してほしかったです。そう考えると、Sペンが使えるGalaxyモデルは、全体的に高評価ですね。ペンの性能も前モデルからかなり進化していますから。
法林氏:あれこそイノベーションだよね。
石川氏:自分もやっぱりGalaxy Z Fold2 5Gですかね。初代ももちろんよかったんですけど、2世代目になって完成度が上がっていますし、こういったチャレンジングな端末は、2世代目のできがいいのかなって思います。折りたたんだ時の使い勝手が向上したし、対応アプリも増えています。5Gスマートフォンの可能性のひとつですね。
石野氏:あれが10万円台まで価格が下がってくれると、普及のチャンスがあるかもしれませんね。あとペンにも対応してほしい。対応のうわさはちらほら見かけますが。
法林氏:Noteシリーズは今回で最後ってうわさだよね。
石野氏:そうですね。Noteシリーズと折りたたみが統合されるとなると、来年こそはペン対応に期待できるかなというところですね。ただ、もう少し細くするのと、低価格化を頑張ってほしいですね。紙とペンを置き換えるとはいえ、紙とペンに15万円、20万円支払う人はほとんどいないので。
法林氏:まあ、紙とペンを置き換える機能もないのに、10数万円するスマートフォンもどうかと思うけどね。
石野氏:あと、2020年はXperiaが頑張ったと思います。こんなに気に入ったXperiaを手にしたのは何年振りだろう?
その割に完成度は高くて、写真をキレイに撮れるし、動作もサクサク。デザインも良いです。あと、日本メーカーだけあって外国人があまり持っていないので、ドヤれると思います(笑)。
法林氏:どの端末がってわけじゃないけど、5Gに繋がってうれしいって時なのに、各端末の5Gのピクト表示が小さいのはあまり好きじゃない。その点シャープはでかでかと5G表記がされる。
石川氏:あと、世間的に誤解している人がいるんですけど、「うちのエリアは5Gじゃないから5G端末を買うと圏外になってしまう」と思いこんでいる人が意外と多い。この誤解はちゃんと解いていかないといけないと思います。あまり5Gエリアが狭い狭いっていいすぎるのも良くないかなって。
石野氏:実際、5Gに繋がっても4Gより遅いこともあります。
石川氏:そうですね。だから速度の問題というよりは、データ通信使い放題の方向なのかなと思います。
石野氏:日本は4Gのクオリティが著しく高いので、ここまで広がっている中で5Gを強く勧める必要もないんですけど、こういうことをちゃんと発信していかないといけませんね。
......続く!
次回は、楽天モバイルについて話し合う予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ!
石野純也(いしの・じゅんや)慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘文/佐藤文彦